百貨店への
アンケート調査

なぜ百貨店のアンケート調査
するのか?

毎年バレンタインデーの前には、百貨店の売り場に彩られたチョコレートが山積みされます。
そのチョコレートの原料であるカカオの生産に関係して様々な問題があるとしたら、その甘いチョコレートも苦いものとなることでしょう。
私たちはカカオの生産に起因する様々な問題を皆さんに知っていただきたく、その販売を手掛けている百貨店に対して、カカオに関する人権・環境についてのデューディリジェンスを行っているか調査をしました。

バレンタイン

デューディリジェンスとは

そもそもこの聞きなれないデューディリジェンスとは一体何でしょうか?
日本ではデューディリジェンスという言葉は、M&A(合併や買収)の際に行う、投資対象についての事前調査をあらわす用語として広く使われてきました。近年では、企業のサプライチェーン(原料の調達から商品の製造、販売までの流れ)において、人権や環境などのリスクを特定し防止していくことに使われています。
チョコレートの原料となるカカオの生産に関連して、児童労働や強制労働、森林破壊、貧困などの問題があると言われています。自社の調達先でこうした問題が起こっていないかを確認して公表することが求められています。
EU では、森林デューデリジェンス規則(EUDR)が合意され、2025 年以降よりカカオを含む森林リスク産品を EU 域内へ輸入できなくなり、企業はデューディリジェンス(リスク評価)を実施することが義務化されます。そのため、森林破壊を伴って生産されたカカオが規制の緩い日本市場に入ってくることも懸念されます。

調査結果

20 の百貨店のうち5 つの百貨店から回答がありました(内1 つはアンケートには無回答)。
各百貨店は、カカオ生産に関する人権・環境問題は把握しており、一般的な人権・環境に対する方針はあるものの、カカオに特化した方針は持っていません。チョコレートの提供者への対応も、カカオに特化したものでなく、一般的なデューディリジェンス(DD)に留まり、サプライヤーの調達先に対する是正措置を求めたり、救済措置を取ることも限定的でした。

*京王百貨店は調査要請への回答はあったが、アンケートには無回答
― は全て無回答

評価基準

各質問に対する評価の基準は以下の通りです。

百貨店への調査基準

調査の方法

2023 年10 月に20 の百貨店に対してアンケートを送付し、カカオに関するデューディリジェンスの調査を行いました。 質問は以下の通りです。

  1. チョコレートに関する環境破壊・人権侵害リスクを知っているか?
  2. リスクに対し、どのような方針を持ち、どのように対処しているか?
  3. サプライヤーに対してのカカオ原料に関する人権・環境方針はあるか?
  4. チョコレート提供者に対して、人権デューディリジェンスは実施している?
  5. チョコレート提供者に対して、森林減少に関するリスク評価の確認をしているか?
  6. リスクがあると評価した場合、調達先に対する是正措置の要請・救済措置の実施をチョコレート提供者に対して求めているか?
  7. 上記の取り組みを行っていない場合、上記の取り組みを、今後、チョコレート提供者に求めていくか?

まとめ

カカオの生産には人権・環境の問題が潜んでいます。企業は自社の調達先でこのような問題が行われていないか確認し、公表する、デューディリジェンスの実施が求められます。
私たちは、2023 年10 月に20 の百貨店に対してアンケートを送付し、カカオに関するデューディリジェンスの調査を行いました。
20 の百貨店のうち、回答したのは5 つのみでした。それぞれ、カカオの問題については把握しているものの、カカオに特化した方針はなく、また提供者に対するデューディリジェンスの実施も行われていません。また、調達先に対する是正措置の要請や救済措置実施の要請も限定的でした。
EU の森林デューデリジェンス規則(EUDR)の合意により、森林破壊を伴って生産されたカカオが規制の緩い日本市場に入ってくることも懸念されます。日本企業もEU 同様のデューディリジェンスの実施が求められています。